コンサルで働く Written by Tsukasa

駆け出しコンサルの悩み

悩みあるある


この記事はコンサルティング会社に転職や就職して思うように成果が出ない人向けに、よくある症状、原因、処方箋をお伝えします。

以下のような悩みがある方は参考にしてみてください。

  • とにかく時間が足りない!
  • 成果物に「しみじみ感」がないと言われる
  • 「紙」が書けない!焦

とにかく時間が足りない

あなたはとある製造業のデジタル戦略策定企画プロジェクトにアサインされました。念願の企画プロジェクトへのアサインでやる気満々です。マネージャーからまず業界の環境について3日間で下調べしておいてくれと頼まれました。

意気揚々と業界の市場規模、見通し、競合の中期経営計画など情報を集めはじめると、あれもこれも調べる必要がある気がしてきました。とてもじゃないけど3日間では調べきりそうにありません。「残業すれば何とかなる!」不安を振り払い、再び作業に取り掛かります・・・

このように「とにかく時間が足りない汗」とプレッシャーに感じる事はありませんか?

「正しく仕事する」事にこだわってしまう

時間が足りないと感じた場合、「正しく仕事する」ことにこだわっていないか立ち止まって考えてみましょう。「言われた事」や「自分のあるべき」に無意識に囚われていないか?を自問してみましょう。

「言われた事」をしっかりこなすことは大切です。しかしこの発想が仕事を増やす事になりかねない事にも注意しましょう。

考えてみれば言われたことが正しいとは限りません。先ほどの例で言えば、クライアントの目的やマネージャー自身の仮説など聞かされていないことがあるかもしれません。また、クライアント自身が経営層の意図を正しく汲み取っていないという事もあり得ます。このような場合、闇雲に無駄な作業をしてしまったり、結果に結びつかなかったりします。

ところが往々にして「言われた事」を鵜呑みにしてしまいがちです。私の場合、コンサルになる前はSEをしていましたが、SEはお客さんに「言われた事」を正しく実現する仕事でした。事業会社でも上司に言われたことをこなす仕事は多いと思います。特にSEや事業会社から転職した人は無意識に言われたことをきちんと行う事に囚われていないか注意しましょう。

次に「自分のあるべき」に囚われて仕事を増やしていないか自問してみましょう。

私の場合、転職して2年くらいは、ここまで調べるべき、自分で何とかすべき、など自分の中の「あるべき」が判断基準になっていることがよくありました。今に思えば、できないヤツと思われたくない、同僚に負けたくない、といった承認欲求があったのだと思います。

自己満足といえばそれまでですが、実際その場では気づかないものです。特に転職したてで頑張ろう、認められよう、稼ごうと思っている人は、「自分のあるべき」に無意識に囚われてないか意識しましょう。

「正しく仕事する」ことと「成果を出す事」は違う

このような原因に心当たりがある方は、発想を変えてみることが大事です。「自分の作業」から「チームやクライアントの成果」に意識の向き先を変えてみましょう。

自分の作業に意識が向いていると、指示された事や作業の完璧さに目がいってしまいます。自分のスキルをつけるため頑張ろうという前向きな気持ちもあるでしょう。しかし、そうなるとどうしても作業に向き合い、真面目であればあるほど仕事が増える一方で、評価されないという悪循環にはまってしまいます。

こんな場合は、意識の向き先を「チームやクライアントの成果」に変えてみましょう。いつまでにどんな成果を出すのかを常に自問しながら仕事をすると、大事な仕事や切り捨てられる仕事、いつまでに何をする必要があるか、足りない情報を誰に聞くか、など自分で主体的に考えて行動することができます。その結果、時間が足りない状態から抜け出すだけでなく、評価も上がるという好循環が生まれてきます。

私は常に成果を考えることを「成果思考」と呼んでいますが、どんな仕事でも役立つ考え方、思考法です。成果思考については別な記事で詳しく書いてみたいと思います。

「しみじみ感」がない

「しみじみ感」という言葉を聞いたことありますか?「しみじみしている」とか「しみじみ感がない」とかマネージャーが成果物をレビューするときによく使う言葉です。私は駆け出しの頃、「しみじみ感がないなあ」とよく言われました。当時は「どういうこと??」と思ったものです。

しみじみ感とはコンサル方言みたいなもので、具体性がある、情景が浮かぶ、といった意味合いです。例えば事業企画であれば定量目標や状態目標は何か、いつまでにどんなリソースが必要かを示したり、業務改善であれば、誰にどんな問題が生じており、その影響を定量的、定性的に示したりします。この内容が具体的であれば「しみじみしている」となるのですが、目標が曖昧だったり、問題や影響が曖昧だったりすると「しみじみ感がない」となる訳です。

ロジックではしみじみ感は出ない

しみじみしない時の原因の一つはロジックに頼ってしまっている事です。調べた情報で辻褄があうストーリーを組み立てれば成果物を作ることはできます。ただおよそ問題や解決策はクライアントは気づいています。ロジック頼みではクライアントにとって目新しく面白い示唆を出すことは難しいのです。

ですが、問題や原因を整理したり、事業の外部要因を整理したりすることはそれなりに大変なので、それで満足するか時間切れになってしまうことが多いのです。

リアルな情報がしみじみ感を生む

ヒアリングで確認した課題がどの程度発生しているのかデータによる裏付けをとる、解決策がなぜ実行に移せないのか阻害要因を探る、など踏み込んだリアルな情報があれば、新しい示唆が得られたり、ある程度想定していたことでも事実を確認できたり価値をつけることができます。

それはわかっているけど時間が足りない場合はどうするの?と疑問に思うかもしれません。そんな時は、時間が足りない罠にはまっていない事を確認しましょう。その上で時間が足りない場合は、安易に結論を出さずに、初期仮説としてその時点の答えと深堀の余地を示して検討をつなぐといった対処があります。

このように対処法はあるのですが、それができない心理的な壁もあります。私の場合「要するにこうだよね」とわかったつもりでまとめてしまうクセがありました。その原因に、いろいろ調べると収集が付かなくなる怖さがあったように思います。当時はそんなことは微塵も気づかないので、長いこと「しみじみ感がない」と言われてました。

「紙」が書けない

「紙」とは成果物のスライドのことです。業務課題の分析や事業構想をまとめるときには大抵パワーポイントでスライドを作ります。

当たり前ですがスライドは最初は真っ白です。そこにタイトル、メッセージライン、ボディ、を埋めていくのですが、慣れるまではこれが難しいんですね。何を書くか筆が止まります。それではダメだと気を取り直して書く必要があると思うことを書き始めます。

そうするとどうなるか?スライドが量産されるが一向に成果物がまとまらない状態に陥ります。何とかまとめてもつながりが悪く、何を伝えたいのかよくわからない成果物になってしまいます。

いきなりスライドを書いてしまう

このような状態に陥る原因の一つはいきなりスライドを書こうとしているためです。成果物なのでスライドを書くのは当たり前だろうと思われるかもしれません。私はそう思っていました。

例えば業務改善のプロジェクトでは、業務量の調査結果をグラフで書いたり、ヒアリングで確認した課題を分類してまとめたりしました。こうしてスライドは沢山できましたが、いざ中間報告書を作る段階になって筆が止まるのです。何を伝えれば良いのかと。

検討とアウトプットを分ける

そんなときにこんなアドバイスをもらいました。「いきなりスライドを書くのではなく、タイトルやメッセージを書いて何を伝えるかを考えた方が良いよ」

当時の私にはそれが難しかった。タイトルやメッセージを書こうと思っても筆が止まってしまうのです。今思えば、アウトプットする前に、分析が必要だったのです。ヒアリングや業務量調査からわかったことから何が言えるのか?根本課題は何か?こうした分析を飛ばして、いきなりスライドに向き合っていたため、筆が止まっていたのです。

言われれば当たり前に聞こえると思いますが、検討とアウトプットを切り分けられていない人は多いです。パワポでは箱を置いたりすると何となく紙が埋められるので、分析を飛ばしてアウトプットを書き始めたり、分析をそのままアウトプットにしたり、気づかずに作業をしている場合があります。特に時間が足りないと焦っている時は要注意です。

ボストンコンサルティング出身の同僚から聞いた話では、マネージャーは報告会の2日前まで、ワードで分析とメッセージを組み立てているそうです。パワポは一切書かない。パワポを書くのは2日前からで、ワードのメッセージに沿ってチームで手分けして一気に仕上げるそうです。

そもそもパワポで資料を書くというのは、色々な弊害があります。私がかつてプロダクトマネージャーをしていた某外資EC会社ではパワポが禁止されています。すべてのドキュメントはワードで書かれた文章と数字の表です。

これは極端な例かもしれませんが、アウトプットと分析は別物であるということはこの2つの事例かもわかると思います。ドキュメンテーションについては別な記事で掘り下げたいと思います。

意外に教えてくれないキホン

いかがでしたでしょうか?改めて書いてみると当たり前の事が多いような気もします。しかし実際に悩んでいる時は気づかないものです。しかも教えてくれる人がいない。できる人ほど何故できないのかわからないので教えられなかったりします。

コンサルタントとしておさえておきたい基礎スキルについても書いていきたいと思います。